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FTS The Football Style Club
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FTS CULTURE 002ENGLAND / FOOTBALL / FASHION / MUSIC

SHIRT / TERRACE × STREET

Football Shirtは、いつから街着になったのか。

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· ·

SOMEWHERE IN ENGLAND

いま、Football Shirtを着て街を歩くことは、特別なことではない。

スタジアムへ向かう人だけではない。

古着屋へ行けば、20年前、30年前のクラブシャツが並んでいる。

ライブ会場にもいる。

パブにもいる。

東京にもいる。

スカートに合わせる人もいれば、ジーンズに合わせる人もいる。

そのクラブを応援している人もいれば、そうではない人もいる。

2020年代に入ると、Football Shirtにジーンズ、adidasのSambaやGazelleを合わせるスタイルに、ひとつの名前までついた。

Blokecore.

まるでFootball Shirtが、突然Fashionに発見されたようにも見える。

でも、本当にそうなのだろうか。

Football Shirtは、いつから街着になったのか。

調べていくと、その問いには、ひとつの年号では答えられなかった。

これはFootball Shirtのデザイン史ではない。

一枚のユニフォームが、ピッチを出て、スタンドを通り、音楽と出会い、街へ出ていくまでの話だ。

01

BEFORE THE SHIRT

最初からFootball Shirtが「欲しい服」だったわけではない。

それは選手が試合をするための服だった。

クラブの色があり、番号があり、エンブレムがある。

スタンドからそれを見る。

サポーターと選手の間には、明確な境界があった。

もちろん、1950年代末には子ども向けのレプリカも少数存在していた。

ただし、現在のようにサポーターが選手と同じデザインのシャツを買い、それを着てクラブへの帰属を示す巨大な市場は、まだ存在していなかった。

その境界を大きく動かしたブランドがある。

Admiral.

02

1973 / ADMIRAL

1973-74シーズン。

英国Footballの風景に、大きな変化が起きる。

Admiralが、選手のためだけではなく、サポーターが買うことを前提としたレプリカシャツを市場へ送り出した。

National Football Museumは、この時期を現代的なFootball replica shirt市場の重要な転換点として位置づけている。限定的な子ども用レプリカは以前からあったが、AdmiralはFootball kitを大衆へ開いていった。

これは、単なるmerchandiseの誕生ではなかった。

それまでスタンドから眺めていた服を、自分も着られるようになった。

PLAYERFAN
ピッチとスタンドの距離が、一枚の布によって少し縮まった。

Football Shirtは、選手のものだけではなくなった。

ただし。

ここでまだ、Football Shirtが「街着」になったわけではない。

むしろ、この先の英国では少し不思議なことが起きる。

FootballとFashionが近づいていくのに、

Football Shirtそのものは、一度その中心から外れていく。

ARCHIVE / 1973–74 / ADMIRAL
1973–74ADMIRALTHE REPLICA SHIRT

1973–74 / ADMIRAL / THE REPLICA SHIRT

03

THE CASUALS

1970年代末から80年代。

英国のterraceに、それまでとは違う服装の若者たちが現れる。

後にCasualsと呼ばれる文化だ。

Liverpoolをはじめ、European Cupを追って大陸へ渡ったサポーターたちは、英国ではまだ珍しかったスポーツウェアに出会う。

Fila。

Sergio Tacchini。

Lacoste。

Ellesse。

Kappa。

Diadora。

海外遠征から持ち帰られた服は、Football terraceのなかで新しい価値を持つようになった。

ここで面白いのは、

CasualsがFootball Shirtを着ていたから格好よかったわけではないことだ。

むしろ、クラブカラーを前面に出さない服装が選ばれることも多かった。

どこのクラブを応援しているか。

それだけではなく、

何を知っているか。

どこで手に入れたか。

何を選ぶか。

terraceが、ひとつのFashionの競技場になった。

ARCHIVE / 1979–81 / TERRACE
FILA / SERGIO TACCHINI / LACOSTEELLESSE / KAPPA / DIADORATERRACE / EUROPE / AWAY DAYS

TERRACE / AWAY DAYS / EUROPE

Footballはここで、Football Shirtそのものではなく、「服を選ぶ文化」を街へ送り出した。

これは遠回りに見える。

でも、Football Shirtが後に街へ戻ってくるためには、この遠回りが必要だったのかもしれない。

04

ITALIA '90

1990年。

Italy.

World Cup.

Englandは準決勝まで進んだ。

Gascoigneが泣いた。

そして、New Orderが鳴った。

WORLD IN MOTION.

それまでFootballと音楽が無関係だったわけではない。

だがItalia '90の前後、英国で両者の距離は明らかに変わっていく。

Kevin Cumminsは後年、1990年以前のFootballには「uncool」な空気があり、Italia '90とNew Order、そして1992年のPremier League開始によって状況が変わったと振り返っている。

Football。

Indie。

Rave。

Magazine。

Fashion。

それまで別々に見えていたものが、同じ若者の生活の中に入ってくる。

West Germanyのシャツ。

Netherlandsのオレンジ。

Englandの白。

大胆なグラフィック。

光沢のあるsynthetic fabric。

Football Shirtは、

「どのチームか」

だけではなく、

「どんなデザインか」

でも見られるようになっていった。

そして、その流れの先にManchesterがある。

ITALIA '90 / FOOTBALL × MUSIC
1990 / ITALIAFOOTBALL / MUSICWORLD IN MOTION

ITALIA '90

05

1994 / MAINE ROAD

1994年。

Maine Road周辺。

Kevin Cumminsのカメラの前に、二人の兄弟が立った。

Noel Gallagher。

Liam Gallagher。

二人が着ていたのは、

Manchester CityのFootball Shirtだった。

NMEがCumminsに撮影を依頼し、1994年5月9日号の表紙となった写真だ。

まだOasisが巨大なスタジアムを埋める前。

Football Shirtが音楽誌の表紙にいた。

ただし、

OasisがFootball ShirtをFashionにしたわけではない。

Admiralがいた。

Casualsがいた。

Italia '90があった。

その前に、長い助走があった。

Oasisが特別だったのは、その交差点を極端なほど鮮明に見せたことだ。

二人にとってCity Shirtは、stylistが用意した衣装ではなかった。

自分たちがどこから来たのかを示す服だった。

TEAMPERSON
クラブのシャツが、その人自身を説明する服になった。
ICON / OASIS × MANCHESTER CITY / 1994
NOEL & LIAM GALLAGHERMANCHESTER CITY / 1994

1994 / MAINE ROAD — TEAM → PERSON

06

THE SPONSOR

1994年のManchester City shirt。

胸には、大きくこう書かれている。

BROTHER

日本の企業名だ。

スポンサーは、本来広告である。

契約が終われば、別の名前に変わる。

でもFootball Shirtでは、不思議なことが起きる。

時間が経つと、スポンサーまで思い出になる。

SHARP。

JVC。

Carlsberg。

Candy。

BROTHER。

文字を見るだけで、選手や試合や時代が戻ってくる。

広告だった文字が、時間によって文化へ変わる。

Football Shirtは、

着るアーカイブ

になっていく。

A rack of vintage football shirts, including a Manchester City BROTHER shirt.
MEMORY / VINTAGE SPONSORSVINTAGE SHIRTS ON THE RACK — SPONSORS BECOME MEMORY · IMAGE: FTS
07

VINTAGE

時間が経つ。

選手が引退する。

スポンサーが変わる。

メーカーが変わる。

スタジアムまでなくなることがある。

でも、シャツは残る。

古着屋のラックに掛かっている。

誰かのクローゼットに眠っている。

ネットオークションに現れる。

1990 England。

1988 Netherlands。

90年代のManchester City。

95-96 Newcastle。

France '98。

かつて最新だったFootball Shirtが、

古くなったことで、別の価値を持ち始める。

それは単なるsportswearではない。

ある試合。

ある選手。

ある街。

ある音楽。

ある時代。

それらが一枚の布に残っている。

古いFootball Shirtを着ることは、

少しだけ、

時間を着ること

なのかもしれない。

08

BLOKECORE

そして、Football ShirtはFootballから少し自由になった。

2021年末から2022年にかけて、SNSでひとつの言葉が広がっていく。

Blokecore.

ヴィンテージのFootball Shirt。

ジーンズ。

足元にはadidas Samba。

名前だけ聞けば、新しいFashionに思える。

でも、ここまで歴史を辿ってくると、どこか見覚えがある。

terrace。

Casuals。

90年代の英国。

新しかったのは服そのものというより、

新しい世代が、それに新しい名前をつけたこと

だった。

だが、そこからさらに数年。

Football Shirtは、Blokecoreという言葉からもはみ出していく。

09

BEYOND BLOKECORE

2025年。

Women's Euros。

Football Shirtは、また違う姿を見せていた。

Depopでは大会期間の盛り上がりの中でFootball Shirtの検索が大きく伸びたと報じられ、The Standardは151%増という数字を伝えている。

さらに、oversizedな男性向けシルエットをそのまま着るだけではなく、shirringを施して身体に合わせたり、自分で切り、縫い、形そのものを変える着方も現れた。

Football Shirtを、

Football側が決めた着方のまま着る必要すらなくなった。

そして2026年。

FootballとFashionの距離はさらに縮まっている。

Uruguayでは、Gabriela Hearstが2026 World Cupに向け、選手・スタッフを含む代表団が着用する公式のオーダーメイドウェアを手がけた。

BurberryはAutumn 2026の「A Good Sport」でmatch day cultureを舞台にし、Footballの選手たちをキャンペーンに登場させた。

もう、

「Blokecoreが流行っている」

だけでは説明できない。

Football Shirtは、Football cultureを引用するFashionから、

Fashionそのものの一部へ入り始めている。

そして、ここで一番面白い変化が起きる。

A person in a black-and-white football shirt on a city street outside a football pub on matchday.
NOW / STREET / 2025–26FOOTBALL SHIRT / STREET — MATCHDAY, TODAY · IMAGE: FTS
10

WHOSE SHIRT IS IT?

「どのクラブを応援しているか」

だけでは、着る理由を説明できなくなった。

昔の配色が好きだから。

スポンサーのロゴがいいから。

襟が格好いいから。

旅先で見つけたから。

好きなミュージシャンが着ていたから。

父親が持っていたから。

あるいは、

そのクラブについてほとんど知らないけれど、

単純に、その一枚が格好いいから。

それで着る人もいる。

Football fanからすれば、少し複雑かもしれない。

知らないクラブのシャツを着るのか、と。

確かに、一枚のシャツの後ろには、誰かの人生がある。

クラブがある。

街がある。

勝った日がある。

負けた日がある。

だから、ただの柄ではない。

でも、この話を逆から考えてみる。

11

ONE SHIRT.ANOTHER WORLD.

知らないクラブのシャツを着る。

胸に、見慣れない名前が書いてある。

気になって調べる。

クラブを知る。

街を知る。

その街で聴かれていた音楽を知る。

スタジアムを知る。

そこで何を食べ、

何を飲み、

どんな言葉を話すのかまで知りたくなる。

ONE SHIRTANOTHER WORLD
CLUBCITYMUSICFOODLANGUAGEMEMORY
Football ShirtがFootballから離れてしまったのではなく、Footballへの入口が増えた。

そう考えることもできる。

僕自身、そうだった。

Bob MarleyがFootballを好きだったと知って、彼の音楽をもっと聴くようになった。

Footballからフーリガンを知り、映画を観た。

ATHLETAの仲間たちと知り合ったことで、ブラジルに興味を持った。

Footballだけではない。

食べ物も、

飲み物も、

言葉も気になった。

アメリカの空気に影響を受けたこともある。

イギリスの空気に影響を受けたこともある。

全部をFootballに結びつける必要はないと思う。

入口がFootballだっただけで、

その先には、もっと大きな世界があった。

12

MORE THAN A SHIRT

Football Shirtは、いつから街着になったのか。

結局、最初の問いには、ひとつの年号では答えられなかった。

1973年。

Admiralがレプリカ市場を変え始めたとき。

70年代末。

若者たちがヨーロッパから見慣れないsportswearを持ち帰ったとき。

terraceでCasualsの文化が育ったとき。

Italia '90の夏。

1994年。

OasisがManchester Cityのシャツを着たとき。

あるいは、

TikTokで誰かが古いFootball Shirtをジーンズと合わせたとき。

どれかひとつではない。

Football Shirtは何度も、

PITCH → FAN → TERRACE → STREET → CULTURE

を行き来しながら、少しずつ意味を増やしてきた。

19731979–81199019942021/2220252026
1973 → 1979–81 → 1990 → 1994 → 2021/22 → 2025 → 2026

だから古いFootball Shirtを見ると、不思議な感覚になる。

シャツを見ただけで、思い出す試合がある。

選手がいる。

ゴールがある。

一緒に見ていた人がいる。

そして、ときどき、

その頃の自分まで思い出す。

Football Shirtには、

デザインだけでは説明できないものが残っている。

そして、その記憶を何も知らない誰かが、

何十年後かに「格好いい」と言って着る。

それも悪くない。

その人がいつか、

そのシャツの向こう側を知りたくなるかもしれないから。

一枚のFootball Shirtから、知らなかった世界へ。
それもまた、Football Styleなのだと思う。
FTS

FOOTBALL IS BEYOND90 MINUTES.

Footballは、90分で終わらない。

試合を見ていない時間にも、

服の中にある。

音楽の中にある。

映画の中にある。

旅の中にある。

街の中にある。

そして、

自分の記憶の中にある。

だからFTS CULTUREは、

Footballだけを説明するための記事をつくらない。

Footballを入口に、

その向こう側へ行く。

Footballを通して、世界の文化を見る。

PLAYERFANTERRACESTREETCULTURE
一枚のシャツが移動するたび、意味がひとつ増えていった。
CULTURE WORD 002 / OBJECT

REPLICA

Replica / レプリカ

偽物、という意味ではない。Footballでは、選手が着ているものを、自分も着られるということ。ピッチとスタンドの距離を縮めた、一枚の服。そして、その一枚から巨大な文化が始まった。

WORDS BEHIND FOOTBALL CULTURE

FTS PLAYLIST 002

FROM TERRACE TO STREET

  1. 01NEW ORDER — WORLD IN MOTION
  2. 02THE STONE ROSES — FOOLS GOLD
  3. 03OASIS — COLUMBIA
  4. 04THE LIGHTNING SEEDS — THE LIFE OF RILEY
  5. 05THE VERVE — BITTER SWEET SYMPHONY
SCENE

FROM TERRACE TO STREET

古着屋を出た午後。

袋の中には、

自分が一度も見たことのない試合のシャツが入っている。

帰ったら、

そのクラブについて調べてみよう。

LISTEN / PLAYLIST 002
FROM CULTURE 001

KIPPAX /OASIS × MANCHESTER CITY

1994年。

NoelとLiamがManchester City Shirtを着て、

Kevin Cumminsのカメラの前に立った。

002は、

その一枚から時間を巻き戻して始まった。

NEXT DOOR / CULTURE 003 — CHANT / TERRACE × MUSIC

なぜ、スタジアムでは同じ歌を歌うのか。

CULTURE 003
FTS CULTURE 002WORDS & EDITING — DAISUKE OGAWA / FTS